介護施設で働く看護師の役割と仕事内容

看護師お役立ち情報

看護師の転職先として介護施設で働くことに興味がある方は多いと思います。病院やクリニックの経験しかない方は、どのように仕事が変わるのか、自分に合っているかなど、不安に感じることがたくさんあると思います。介護施設で働く看護師の現状について説明します。

介護施設の種類と看護師の役割

介護施設は利用者さんにとって「生活の場」=「家」という考え方であるため、入院中のような制限はなく、その方にとって質の高い生活が送れるように医療・看護面からサポートをします。

介護施設にはいくつか種類があります。

介護施設の種類

施設 運営 対象者 特徴
特別養護老人ホーム(特養) 公的施設 要介護3以上 医療処置がある人も多く、お見取りまで対応するところもある

終身で利用する方が多い

医師:入居者が100名を超えない限り常駐不要

看護師:入居者100名につき3名の常駐義務

有料老人ホーム(有料) 民間施設 自立〜要介護5まで 24時間体制で介護を受けられる。

他の介護施設に比べると医療・介護ニーズが低い人が多い。

介護付き有料老人ホームは看護師が常駐する。

ナーシングホーム 民間施設 施設により異なる

重度の要介護者も入居可

介護サービスだけでなく看護師が24時間365日常駐し、医療的な処置やリハビリ、看取りなどを行う老人ホーム。

主に慢性期・終末期療養におけるケアを提供する。

介護施設では対応できない医療依存度が高い人が多い

サービス付き高齢者住宅(サ高住) 民間施設 60歳以上の方

要介護認定された60歳未満の方

基本的に介護サービスはなく、安否確認や生活相談サービスが受けられる賃貸住宅。必要な医療処置は看護師が提供する。

看護師は施設によって施設常駐看護師か、訪問看護師を入れている。夜勤があるところもある。

グループホーム 民間施設 要支援2以上で支援があれば身の回りのことができる

認知症のある高齢者

認知症があったり自宅での生活が困難な方が生活支援を受けて生活する場。

介護スタッフは利用者3名に対して1名以上の配置が必要、看護師配置に関する法的義務はない。

介護老人保健施設(老健) 公的施設 退院後、在宅療養に戻るためのリハビリが必要な人 在宅へ戻るリハビリをする施設。3ヶ月に一度審査があり、退所が決まる。

医師:常勤(24時間体制ではない)

看護師:24時間常勤

入居者100名あたり看護師は10名以上配置。

デイサービス 民間施設 要介護1〜5 通所の介護サービスを提供する施設

 

介護施設で働く看護師の仕事内容

介護施設で働く看護師の仕事は主に、利用者さんの健康管理です。

施設によって行う医療行為の範囲は異なりますが、利用者さんに応じて以下のような業務を行います。

医療依存度が低い有料老人ホームの場合

  • バイタル測定
  • 薬の管理、配薬
  • 処置(軟膏塗布、爪切り、湿布貼付、点眼)
  • 往診時の介助
  • 急変時の対応・処置

上記に加え、医療依存度が高い施設(ナーシングホーム等)では以下のような処置を行います。

  • 経管栄養
  • 吸痰
  • 褥瘡などの創傷処置
  • 採血、点滴
  • 膀胱留置カテーテルの管理・交換
  • インスリン注射

介護施設での看護師の勤務時間と給料

日勤が主となるため、休憩を挟んで8時間労働が一般的です。病院と比べると残業や夜勤は少ないため家庭との両立を目指したい方には向いているでしょう。夜勤がない施設ではオンコール体制をとっているところもあります。

令和2年度に厚生労働省が実施した「介護事業経営実態調査」の結果より、施設毎の看護師の平均給料をまとめました。

常勤看護師の平均給料(月収)

施設の種類 正看護師 准看護師
特別養護老人ホーム 422,652円 382,542円
介護老人保健施設 448,962円 382,799円
有料老人ホーム 427,972円 375,933円
グループホーム 397,611円 319,635円
デイサービス 354,319円 326,620円
看護小規模多機能型居宅介護 414,406円 354,842円

<非常勤看護師の平均給料(月収)>

施設の種類 正看護師 准看護師
特別養護老人ホーム 375,894円 349,664円
介護老人保健施設 362,987円 334,143円
有料老人ホーム 375,101円 342,629円
グループホーム 339,533円 299,425円
デイサービス 327,058円 291,242円
看護小規模多機能型居宅介護 347,775円 292,644円

介護施設看護師の給料はボーナスの有無や施設の種類などによって異なります。

令和3年に厚生労働省が行った「賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均年収はおよそ498万円。一方、介護施設の看護師の平均年収は444万円です。介護業界で働く看護師は他と比べると給料水準は低くなります。

介護施設看護師と病院看護師の違い

介護施設では病院と比べると行う医療行為は減ります。しかし常に医師が近くにいるという環境ではないため、有事の際などは看護師の判断や処置が重要となるため、緊張感を持ちながら働いてます。

主治医(施設内に不在)やケアマネ、介護職と連携をとりながら働く点は病院との大きな違いと言えるでしょう。

介護施設での看護師の悩みと対処法

どこで働いても悩みはあると思いますが、ここでは介護施設特有の悩みを解説します。

介護職との摩擦「施設看護師は使えない?!」

介護職との関係性に悩む施設看護師の方は多いようです。その原因は、優先すべき業務内容の違いや、人手不足にあると考えられます。

介護施設で働く看護師は、利用者の健康管理や必要な医療行為を行う役割を持っています。対し介護職は主に、食事・排泄・入浴介助等の身体的サポートや、調理・清掃・洗濯等の生活面のサポートを行います。業務内容が異なり見ている視点が違うため、考え方や優先すべきことにギャップが生じます。

互いの業務への理解不足に加え、人手不足からくる余裕のなさが相まって対立が起きやすい状況になります。

看護師が看護業務に専念していると、介護職からは「忙しいのに他ごとをやっていてオムツ交換も手伝ってくれない!使えない!」と言われる事があるんです。

両者がそれぞれの役割や業務内容を理解することが重要ですね。また、本来自分の業務内容でなくてもできる範囲で協力することでお互いの仕事への理解が深まるでしょう。

介護施設での看護師のメリットとデメリット

介護施設で働くメリットやデメリットは、以下のようなことが挙げられます。

メリット

  • 夜勤や残業が少ない
  • 体力的な負担が少ない
  • 委員会や会議などがない(少ない)

介護施設は業務内容や勤務体制的に負担が少なく、働きやすい職場であると言えます。

デメリット

  • 看護師の中では収入が少ない
  • 知識や技術の向上はしにくい
  • 同施設に看護師が少ない
  • 緊急時は自分の判断や処置にかかっている

業務内容や勤務体制が病院と比べると楽な分、給料は少なくなります。また、施設内に医師や他の看護師がいない・もしくは少ないため、医療面における責任や負担は重くなりがちです。

介護施設で働く看護師に向いている人

  • 高齢者とのコミュニケーションが好きな方
  • 認知症看護、緩和ケアに興味がある方
  • 自分のペースで働きたい方

 

介護施設への転職方法と注意点

一口に介護施設と言っても受け入れている対象者や機能は様々です。

たくさんある施設の中から選ぶには、転職サイトに登録して情報を集めることをおすすめします。求人に関する情報を一同に得ることができますので、いくつかの候補を比べて選ぶことができます。

施設よっては介護業務の比重が大きくなります。自分は医療行為が少ない施設が良いのか、できる限り看護技術を落としたくないのか、勤務時間を選ぶのか、何を優先するかを考えて就職・転職先を探しましょう。

まとめ:介護施設での看護師の役割とは

施設看護師の主な仕事は利用者さんを医療面からサポートし、健康管理を行う事です。施設によって行う医療処置は異なりますが、その方に必要なサポートを行います。一般的には病院より医療行為は少なく、ゆっくり自分のペースで働きたい方に向いています。介護士さんと協力しながら、高齢者を支えていく施設看護師に興味がある方はぜひ就職・転職先として考えてみてくださいね。