この記事では、看護師向けに睡眠時無呼吸症候群(SAS)でお馴染みの、CPAPの適応や管理について解説します。また、CPAP以外の治療法についても解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり弱くなったりする病気です。
代表的なのが 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)で、のどの空気の通り道(気道)が狭くなったり塞がったりすることで起こります。肥満が無呼吸の原因として上がりますが、痩せ型でも顎の骨格が小さいと無呼吸になる人もいます。
睡眠時無呼吸症候群の種類
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS) | 肥満や顎の小さい人。気道が閉塞して起こる。 |
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS) | 脳や神経の病気が原因。割合は少ない。 |
睡眠時無呼吸症候群の症状
- 大きないびき
- 睡眠中の無呼吸(家族から指摘されることが多い)、低酸素
- 日中の強い眠気や集中力の低下
- 起床時の頭痛やだるさ
睡眠時無呼吸症候群のリスク
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると日中の強い眠気や集中力の低下を招くだけでなく、高血圧や心筋梗塞、脳卒中など循環器系の病気のリスクを高めます。また糖尿病や肥満とも深く関係しており、生活習慣病の悪化につながる可能性もあります。さらに事故や労働災害の原因になることもあります。
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高血圧、心筋梗塞、不整脈、脳卒中など心血管系の病気リスクが上昇
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居眠り運転や仕事中の事故につながる危険
睡眠時無呼吸症候群の主な治療法
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CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
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マウスピース(口腔内装置)
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生活習慣改善(減量、禁酒、禁煙、横向きで寝るなど)
- 手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術、レーザー口蓋垂軟口蓋形成術)
睡眠時無呼吸症候群の治療の適応
CPAPを保険診療で使うには、簡易PSG AHI:40回/h以上 FULL PSG:AHI:20回/h以上という基準を満たす必要があります。
AHI | |
軽度 | 5〜15 |
中等度 | 15〜30 |
重度 | 30以上 |
AHI:5以上で睡眠時無呼吸症候群と診断されますが、CPAPの治療対象はAHI:20以上です。それ以外は、希望に合わせてマウスピースを作成するなどの治療法が検討されます。
睡眠時無呼吸症候群の検査 PSG(ポリソムノグラフィー)
睡眠時無呼吸症候群の検査には以下のものがあります。まず簡易PSGを行い、精密検査のFULL PSGへと進みます。
簡易PSG
検査の機械を持ち帰り、自宅で患者さんが自己で行う検査。呼吸、SPO2のみの簡易的な検査。ODI(oxygen desaturation index)がわかる。
FULL PSG
簡易PSGでAHIもしくはODIが5〜39だった場合、FULL PSG検査へ進みます。FULL PSGは1泊入院(夜に入院し早朝に退院)で行う精密検査です。
上記写真のように、頭や顔面に何個ものセンサーをつけた状態で寝ていただきます。
センサーの種類 | 観察ポイント |
脳波、眼球運動、顎筋電図 | 睡眠段階や覚醒反応 |
心電図 | 心電図、不整脈イベントの有無 |
いびきセンサー | いびきの有無 |
SPO2モニター、呼気センサー | 呼吸イベントの確認 |
胸腹部ベルト | 無呼吸の有無、体位 |
(足センサー) | むずむず脚(レストレスレッグス)症候群の判定 |
電極センサーはペーストとテープでつけます。頭部(脳波)はテープを貼れないためネットを被せて抑えます。
検査時の注意事項
- 口の周りに電極をつけるため、口周りや顎に髭が生えている人は剃ってきてもらう必要がある。
- 整髪料や顔に保湿クリームが付いていると、電極が上手くつかないため落としてもらう。
- 枕が変わると寝られない人は、自宅の枕を持参してもらうことも可
- 環境が変わったり検査機械が気になって寝れない人は、検査時だけ眠剤を使用することもできる。
CPAP(マウスピース)タイトレーション
治療を始めている人が、CPAP(マウスピース)の効果を見るために、CPAP(マウスピース)を付けた状態でFULL PSG検査を行います。患者さん自身のCPAP(マウスピース)を持参して検査で使用します。
CPAPタイトレーションは、設定圧力が適切かをみます。
CPAPとは
CPAP(シーパップ)とは、中等度〜重症の睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる「持続陽圧呼吸療法」です。専用の装置を使い、鼻や口に装着したマスクから一定の空気を送り続けることで、気道が閉じないように保ちます。これにより睡眠中の呼吸停止やいびきを防ぎ、酸素不足を改善します。眠りの質が向上し、日中の眠気や集中力低下を軽減できる効果が期待されます。
注)CPAPは睡眠時無呼吸症候群の根本的な原因が治るわけではありません。

CPAPの管理
CPAPの管理は、呼吸器内科、循環器内科、耳鼻科などが外来で行います。
施設によって違いはあるかもしれませんが、CPAPの機械は基本的に業者からレンタルになります。患者さんはかかりつけ医へ定期的に受診し、診察代+管理料を支払います(保険診療)。CPAPレンタル料はかかりつけ医が業者へ支払います。
受診毎に、CPAPのレポートで使用状況やAHIを確認し、患者さんへアドバイス(診察)をします。
CPAPのマスク
- ネーザルマスク →鼻だけ覆う
- フルフェイスマスク →鼻と口を覆う
- (ピローマスク) →鼻に入れる あまり見たことない
基本的には、ネーザルマスクを使用します。口呼吸でネーザルマスクでは効果が得られない場合にフルフェイスマスクを使用します。
レポート
CPAPを使用すると睡眠時の呼吸データが記録され、SDカードやオンラインで管理されます。レポートは受診時に医療機関で確認し、患者さんに渡します。
- CPAP使用状況(使用日数、平均使用時間、4時間以上使用できている日の割合)
- AHI
- リーク量
CPAPを自費で購入することも可能
施設によっては、CPAP自費購入に対応しているところがあります。この場合、医療機関への定期通院は不要です(レンタル料が発生しないため)。海外赴任に行く人などで利用する方がいます。もしくは、PSG検査ではCPAPの適応にはならなかったが、どうしても使用したい人が利用する場合があります。
自費購入の場合、20〜50万円程度。
CPAPのトラブル対策
- 陽圧に慣れない:圧変更を試してみる。
- 上手く圧がかかっていない:マスクと顔の間に隙間が生じ、圧が漏れてしまっているのが原因。マスクのサイズやフィッティング具合を調整する。
- 鼻腔が乾燥して痛い:加湿器を使用する。
- 花粉症など鼻炎で鼻呼吸ができない:フルマスクへ変更、投薬を考慮する。
定期メンテナンス
- CPAP本体の定期メンテナンスは業者さんが対応。
- マスク、フィルター、チューブなどの消耗品は定期的に交換を行う。
CPAP離脱の原因
CPAPを導入しても、以下のような理由で離脱してしまう方も結構います。
- 毎日使うのが面倒
- 陽圧に慣れない
- CPAPの音が気になる(家族的にはいびきをかかれるよりはマシ)
- 装着する前に寝落ちしてしまう
- 途中で外してしまう
- お金がかかる(3割負担で、4,500円~5,000円/月)
マウスピース
CPAPの適応とはならなかった場合や、CPAPが上手く使えない人にはマウスピースの使用が考慮されます。マウスピースは歯科で作成します(保険適応)。
マウスピースを使い、下顎を前に出した状態を維持し、舌の位置を上げることによって気道を広げていびきや無呼吸を防ぎます。