在宅医療に必要な看護技術:皮下点滴の行い方

看護師お役立ち情報

「皮下点滴」は病棟ではあまり行われない投与方法かもしれません。しかし在宅医療や終末期の現場ではよく遭遇する手技のため、訪問看護師や施設看護師には必須の看護技術となります。

この記事では皮下点滴について詳しく解説しています。

 

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皮下点滴とは

本来点滴といえば、静脈内に直接投与する静脈点滴が一般的ですが、皮下点滴は皮下に針を留置し点滴を行います。

一度皮下組織に水分(薬剤)を溜め、徐々に吸収されていく形となります。高齢者の脱水治療のための点滴や、抗生剤の投与、緩和療法のための医療用麻薬の投与などを行うことができます。

皮下点滴の利点

・血管確保が難しい患者さんでも容易に点滴ができる

穿刺場所は腹部や大腿部などの皮下であるため、血管確保が難しい患者さんでも容易に点滴を行うことができます。

・必要な分しか吸収されないためin過多にならず浮腫が起こりにくい

皮下に注入した点滴は体に必要な量しか吸収されません。そのため水分過多になることがなく、心不全の方や終末期の方など水分が多いと体液貯留をしやすい方には負荷が少ない点滴方法です。

・止血手技が不要なため抜針などの管理がしやすい

静脈点滴のように血管に針を留置している訳ではないので、抜針時の止血が不要です。そのため在宅医療の現場では、点滴終了時の抜針は家族に依頼することもよくあります。また、もし事故抜針してしまったとしても出血しないため安全であることも、皮下点滴が在宅医療でよく用いられる理由です。

 

皮下点滴のデメリット

・皮下組織が少ない場合、注入時に痛みが出やすい

痛みがある場合は滴下速度をゆっくりに落とす、点滴量を少なくするといった対応を行います。場合によっては点滴部位を変える必要があります。

・皮下点滴では使用できない薬剤がある

等張液以外は注入時に痛みや発赤などの副作用を起こす事があるため使用できません。

皮下点滴で使用できる薬剤は以下を参照してください。

 

皮下点滴で使用できる薬剤

皮下点滴では使用できる薬剤と使用できない薬剤とがあります。ここでは、皮下点滴で使用される代表的な薬剤を表記しています。

皮下点滴で使用できる主な薬剤

  • リンゲル液(ヴィーンF、ラクテック)、1号液・3号液、生理食塩液
  • ビタメジン(ビタミン剤)、フロセミド、ヘパリン、インスリン

など。

皮下点滴で使用できる抗生剤

  • ロセフィン(セフトリアキソン)
  • ビクシリン(アンピシリン)
  • スルバシリン(スルバクタム)

緩和目的で使われる薬剤

  • モルヒネ塩酸塩
  • ペンタゾシン
  • ドルミカム
  • サンドスタチン

これらの薬剤は通常、インフューザーポンプなど持続注入ポンプを使用し、微量ずつ持続皮下注射を行います。

 

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皮下点滴の行い方

それでは実際の手技の行い方を解説します。

必要物品

指示された点滴薬剤、点滴ルート、消毒綿、留置針(22Gや24Gのプラスチック針)、固定用テープ、絆創膏、家で行う場合はS字フックやハンガーなど、ビニール袋、手袋 など

 

・在宅で皮下点滴を行う場合、必要な点滴物品(衛生材料)は訪問医などの病院・クリニックが用意をします。

・点滴薬剤は、病院・クリニックの在庫を持ち出しで置いておく場合と、処方箋を切って薬局から払い出される場合とがあります。

 

皮下点滴を行う部位

腹部や大腿など面積が大きく、皮下組織が厚い部位に行う場合が多いです。皮下脂肪が多い部位の方が刺しやすく、投与時に痛みが出ることが少なくなります。

皮下点滴が可能な部位:腹部、大腿部、胸部、上腕外側

針の向きは基本的には、抹消側から中枢に向けて穿刺します。

手技

  1. 指示通り薬剤を準備し点滴ルートを作ります
  2. 患者さんの腹部を露出し、穿刺場所を決める(おなかをつまんでタポタポとなるような皮下組織が多い部位を選びます)
  3. 穿刺部を消毒します
  4. 刺す部位をつまみながら浅い角度(10〜30°)で穿刺し、針を留置します
  5. 点滴ルートを接続します
  6. 滴下具合や痛みの確認をしながら滴下を開始します(痛みがなければ滴下速度は全開投与でOK、皮下組織の加減で滴下にムラは出ます)
  7. 点滴が終了したら、抜針し絆創膏を貼ります
患者さんに、点滴を入れたところはポコンと膨らんで(腫れて)いますが、徐々に吸収されていくことを説明します。
家族に終了時の抜針を依頼する場合は、消毒綿・絆創膏・ゴミを入れるビニール袋を用意して置いておく必要があります。

皮下点滴のトラブル対応

皮下点滴で起こりやすいトラブルとその対応についてまとめました。

皮下点滴が落ちない時は

皮下組織の密度などにより点滴の落差では滴下がしずらい場合があります。針の固定を引き気味にしてみる、患者さんの体位を変えてみる、輸液ポンプを使える場合はポンプで圧をかけて投与するなどの対処を行います。

それでも落ちが悪い場合は、点滴部位を変える必要があります。

投与時に痛みがある

穿刺部の皮下組織が少ない場合、点滴を投与することで痛みが出ることがあります。特に初回投与を行う場合は、滴下速度をゆっくりから始めて様子をみたり、投与量を少なくするなどの対応をします。点滴時の痛みは次第に慣れていくこともあります。

 

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