【今更聞けない】胃瘻を用いた経管栄養の看護|実践に役立つポイントを解説

看護師お役立ち情報

胃瘻を用いた経管栄養をされている患者さんは、多くの方が在宅療養をされています。病院でも、高齢者施設や訪問看護でも関わることは珍しくありません。

この記事では、胃瘻について基本的な管理や看護をする上で知りたいことを厳選してまとめました。

胃瘻とは

胃瘻とは経管栄養法の一つで、脳血管障害や神経難病、加齢などで嚥下機能が低下し、経口摂取が難しい患者さんが栄養を摂取するために使用します。在宅療養をしている患者さんでは、ご家族によって胃瘻の管理が行われることも多くあります。

 

胃瘻の種類と特徴

胃瘻には体から出ている部分の違いで「ボタン型」と「チューブ型」があります。

ボタン型:

メリット 目立ちにくく、事故抜去が少ない

デメリット 接続口が細いため詰まりやすい。手先が不自由だと接続がしずらい。

チューブ型:

メリット チューブが太いため注入しやすく詰まりにくい。接続しやすい。

デメリット チューブ部分が体から出ているため事故抜去のリスクがある。チューブが汚れやすい。

左:ボタン型 右:チューブ型

また、体内の固定の方法で「バンパー型」と「バルーン型」があります。

 

経管栄養剤の種類と特徴

経管栄養で用いられる栄養剤には様々な種類がありますが、性状で分類すると「液状タイプ」と「半固形タイプ」があります。

液状タイプと半固形タイプ

液状タイプ

・ラコールNF、エネーボ、エンシュア、エレンタール、イノラス 等

半固形タイプ

・ラコールNF半固形

急性期や病院では液状タイプの栄養剤を使用することが多いですが、慢性期や在宅療養でよく使用されるのは半固形タイプの「ラコールNF半固形」です。

 

半固形剤のメリット

では、なぜ半固形剤が使用されることが多いのか解説します。

逆流をして誤嚥性肺炎を起こしにくい

半固形タイプの方が注入した時に胃が拡張され胃に溜まるので嘔吐や吐き気が起こりにくい。また、栄養剤の性状的に逆流がしづらく、液体タイプに比べ誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができます。

注入時間が短い

液状タイプでは200ml/hの注入速度が目安ですが、半固形剤は100gが2〜3分で入ります。栄養剤をシリンジで投与しようとすると、押す力がかなり必要ですが、専用の加圧バッグとアダプターを使用することで半固形剤であっても容易に注入することができます。在宅療養をしている患者さんでもご家族で管理が行やすい注入方法です。

 

下痢をしにくい

半固形剤の方が通常の食事形態に近いため、液体の栄養剤よりもゆっくりと胃から排出され、消化管の動きも良くなり下痢をしにくいという利点があります。

 

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胃瘻の管理と看護のポイント

では、胃瘻の管理の実際とポイントを解説していきます。

胃瘻を用いた経管栄養の手順と看護

①患者さんの体位を整えます。吸引が必要な方は前吸引を行なっておきます。

②胃瘻にチューブやカテーテルティップを接続し、逆流の確認をします。胃内容物が大量に引けてくる場合は消化できず胃に停滞している状態であるため、対応について主治医に確認します。

③経管栄養を開始します。栄養剤と同時に白湯(水分)の注入指示がある場合は白湯から先に投与します。

〜例〜 栄養指示

  • 朝 ラコール1P+白湯200ml
  • 昼 ラコール1P+白湯100ml
  • 夕 ラコール1P+白湯200ml
    • 白湯(水分)から先に注入する理由:
    • 栄養剤に比べ水分の方が胃からの排出が早いと言われています。栄養剤を先に投与し、胃内容物が増えているところに水分を投与すると食道へ逆流を起こすリスクがあります。

④栄養剤の投与が終了したら、白湯を注入し栄養剤がチューブ内に残らないように流します。注入終了後、1時間程度は食道への逆流防止のためにギャッジアップをかけた状態で過ごして頂きます。

⑤接続チューブやカテーテルチップ等は使用後、中性洗剤を使って洗浄し、よく乾かします。一日一回はミルトンにて浸漬消毒を行います。食器と同じ扱いで問題ありません。

 

栄養投与中の体位

経管栄養を行う場合は逆流防止のため、30°程度ギャッジアップをかけます。30°は褥瘡ができにくい角度でもあります。

左側臥位

  • メリット 食道への逆流が起こりにくい
  • デメリット 栄養剤が胃に溜まり嘔吐の原因になる

右側臥位

  • メリット 栄養剤が十二指腸側に流れやすい
  • デメリット 食道にも逆流しやすく、誤嚥するリスクがある
実際は左側臥位で行うことが多いですね。
N主任
N主任

まだ内容物が胃にある状態では、体位変換自体が誤嚥のリスクにもなります。

 

胃瘻の注入速度

液状タイプであれば100〜200ml/hで投与します。滴下が早いと嘔気や下痢の要因となります。

半固形剤の場合は専用の加圧バッグを使用し、適正圧まで加圧します。

 

胃瘻から内服薬を投与する場合

経管栄養で内服薬を投与する場合は、錠剤を自己で粉砕するか、処方時に細粒タイプや粉砕依頼をしておく必要があります。白湯に溶かし、カテーテルチップで注入します。薬剤を注入したら白湯を注入し流します。

 

胃瘻周囲のスキンケア

胃瘻の瘻孔周囲は、外部ストッパーによる圧迫や胃内容物の漏れなどによりスキントラブルを起こしやすくなっています。胃瘻周囲の皮膚は定期的に観察し、潰瘍や肉芽、出血、炎症兆候などがある場合は医師に診察を依頼します。

  • 胃瘻周囲の皮膚は汚れやすいため毎日洗浄し、清潔を保ちます。入浴も可能です。入浴の際は一般的には防護などをせずそのまま入水して問題ありません。
  • 瘻孔脇から栄養剤や消化液の漏れがある場合は、ティッシュのこよりを瘻孔周囲に巻いて保護します。

 

胃瘻の交換頻度は?

胃瘻は定期的に交換が必要です。バンパー型であれば半年に一度、バルーン型であれば1ヶ月に一度の頻度で交換(入れ替え)をする必要があります。

 

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